ボイストレーニング教室で一番大切かもしれないのは先生との相性だとよく言われます。でもそれにはちゃんと訳があります。
「やる気を引き出してくれる」、「気分をあげてくれる」、そういう先生との関わり方ももちろん大事です。が、声楽はほとんどすべての技術が目に見えにくく伝えにくいものです。だからこそ、生徒さんと先生の間でうまく「共通認識」できる「言語」を見つけていかないといけないのです。
どういうことなのか?詳しく見ていきましょう。
1筋肉と肋骨
呼吸を深く吸うときに「腹式呼吸で深く息を吸う」という表現をすることがよくあります。その呼吸を保ったまま(効果的に使いながら)丹田を下ろしていくように筋肉を意識すると、上体がしぼんでいくような、息を吐ききってしまったしぼんだ風船になったかのような状態になる方が多くいらっしゃいます。この形は歌を歌う体勢には向いていません。体の内筋は下へ向かってしぼませていくような感覚でも大丈夫ですが、息を吸った時に膨らんだ肋骨はそのままキープしておくことが必要になってきます。骨の動きと筋肉の動きをバラバラに意識しないといけないわけですが、これが本当に難しい技術。腹式呼吸が出来ているだけでは膨らんだ肋骨をキープすることは難しく、ロングブレスやロングトーンなどの息のコントロールをすることが難しくなります。肋骨を膨らませたまま息を吐くには骨周りを支えている筋肉や土台となる下半身を支えている足の筋肉、それらをつなぐ内転筋など、多くの筋力の助けが必要になってきます。しかもそれらを瞬発的にではなく持続的に使わないといけないので、ものすごく体力を使います。
2フィジカル的なアプローチ、メンタル的なアプイーチ
歌を歌う時にいつも思うのは、フィジカルな要素をきちんと潰していかないとメンタルてきな要素だけで表現出来るようにはならないということです。卵が先か鶏が先か、の話になるので、どちらを先に鍛えていくべきか、という議論はここでは避けますが、間違いなく精神的なアプローチだけでは表現方法はすぐに壁にぶち当たることになります。感覚でこれらの体の動きを習得してしまう人もいるので、なかなか「精神論で捉えるな」と一概には言えない部分もあるのですが、少なくとも声が出て感情表現までを行うメカニズムは理論的にも物理的にも説明できるものです。
3講師との相性(共通言語の構築)
その動きを「どのように捉えて自分の中に咀嚼していくのか」が声楽レッスンの主な目的でもあります。だから講師と生徒の間には共通認識できる言葉や価値観が必要になってくるのです。
つまり、ただ単にレッスンしやすい、優しい、といった相性だけではなく、講師の言っていることをなんとなくでも納得することができるという相性の良さが必須になってきます。
また、講師の立場からは、いろいろな語彙や表現方法を使って生徒に感覚を伝える努力をしなくてはいけません。自分だけの言葉で語ろうとする講師は教える努力を怠っているということですので、あまり良い講師とは言えないと思います。わかりやすいようにいくつもの表現方法を使ってくる、少なくともその努力をしている講師を探してみると、きっと相性の良い講師に出会うことができると思います。