歌が好きで、歌を習ってみたいと思うけれど、初心者がいきなりクラシック声楽を習いに行って上手になれるものかな?
オペラ歌手のように歌えるようになれたらいいな、と思うけど、あのくらいまでになるにはどのくらいのレッスン料が必要なんだろう・・・?
こんな疑問にお答えします。
本記事の内容
どのくらいのペースでレッスンを続ければどのくらい上達するのかの大体の指針がわかります。個人差はありますが、大体の目安にすることはできます。
クラシック声楽初心者の方が効率的に上達していく方法を知ることができます。
なぜなら
自分が声楽を学んできて20年以上。(幼少期からピアノのレッスンを受け、高校入学時から声楽レッスン開始。音楽大学声楽科、音楽大学院声楽専攻卒)その後、声楽講師としてレッスンをするようになって10年以上のキャリアがある中で、いろいろなペースで声楽を学んできた方々との実体験や結果を通してある程度の目安をはかることができるようになったからです。
私が声楽を習い始めた頃は、お世話になっているピアノ講師の先生に勧められたから習ってみようかな、というくらいの動機だったのでそこまで主体的ではなかったと思います。ただ、歌うことは大好きでした。しかしそれはポップスなどを歌う、という点においてで、クラシック声楽の世界は本当に未知の世界でした。
今思えば、主体性のない生徒だったな、と思いますが、とにかく上手になりたいという人一倍の負けん気はあったので、レッスンに関しては一生懸命取り組みました。
結局のところ
「どのくらいの期間レッスンするのか」
という問題ではなく
「どのくらい一生懸命レッスンするのか」
という問題なのです。
当たり前のことなのですが、他の勉強や技術習得と同じですね。
では、「一生懸命レッスンすること」を前提として、どのくらいのペースどのくらいの期間レッスンすればどういう風に上達していくのかを見ていきましょう。
目次
1いきなりクラシック声楽を習いに行っても大丈夫?
なんとなくクラシック声楽を習いにいくことに気後れしてしまう・・・。そんな風に思う方もいらっしゃるかもしれません。でも大丈夫です。クラシック声楽は何も特別なものではありません。小さい頃の習い事の選択肢の中にピアノがあったように。英会話やヨガを始めてみようかな、と思うように。興味を持ったら自然に足を踏み入れてみて下さい。思ったよりもぐっと身近で楽しい世界が待っているはずです。
基礎力を養う期間
まず声楽レッスンを始めるうえで大切なのは基礎力の向上。これはどんなことを始めようとするときも同じですね。基礎を土台とした上に成り立つ技術じゃないと応用が利きませんし、一度崩れてしまった時に立て直すことが難しくなってしまいます。
例を挙げると、声楽初心者の方がいきなりオペラの難曲に挑むことはできないわけではありません。しっかり音程が取れて、ある程度声が出るようになればそれなりに歌えているように聴こえるでしょう。
けれどそれは、その一曲を集中的に練習した場合の話です。その場合、その曲はある程度歌えるようになっても、他の曲を歌うことはできません。高速道路で140キロ出しながら走行することが得意になっても、狭くて曲がりくねった山道を走行する技術が同時に身につくわけではないのと同じです。
クラシック声楽曲を歌いこなすには様々なテクニックが必要となってきます。簡単なテクニックから難易度の高いテクニックまで。それらを一つずつ習得しながら、ステップアップしていくのが、結局は一番の近道になるのです。
また、この基礎力というのは多くの部分を「発声」が占めます。クラシック声楽を歌う上で最重要になるのが「発声」です。
「発声」の上に「言語」が乗り、その上にテクニックや感情表現が乗ってきます。この「発声」の部分をすっ飛ばしてテクニックや感情表現にはしると、自己満足の世界に埋没していってしまいます。これは、聴いている人からするととても滑稽ですし、時には不快に思われることもあります。
やはりしっかりとした発声の基礎を作り上げることはとても大切です。
基礎力を養う教材
基礎力を養うために、声楽にも練習曲のような教材があります。有名なところではコンコーネ。これは声楽をかじったことがある人なら誰もがやったことがあるものではないでしょうか?日本人の声楽講師の中では一番使われている教材かもしれません。
コンコーネ
コンコーネは50番(50曲収録)、25番(25曲収録)、15番(15曲収録)と3冊あり、高声用や中声用などのバリエーションもあります。何度は15番が一番高いとされています。
トスティ50番こちらは歌曲作曲家としても有名なトスティが作った練習曲集です。コンコーネよりもより旋律が美しいとされています。
パノフカレッジェーロやコロラトゥーラなどの軽く転がる歌声を練習する際に最適な教本です。難易度はかなり高めなので初心者というより声楽上級者にオススメの教材です。
ヴァッカイイタリア留学された声楽家の方はこの教本を使ったとよくおっしゃられていますので、イタリアでは一般的な教材なのかもしれません。日本でも使っている講師の方はいますが、コンコーネに比べたら少数派でしょうか。旋律に簡単なイタリア語が歌詞としてついているので(意味をなす詩というよりは単語がメロディーに乗せてある感じです)、旋律に対しての言語の乗せ方を勉強するのに最適です。
このようにレベルに応じて、歌曲集やオペラアリア以外でも基礎トレーニングの教材を使って歌唱力のレベルアップを図っていくこともできます。
基礎を活かしてクラシック曲へ
発声の基礎を学び、練習曲で発声を旋律にのせる練習をしたら、次は簡単なクラシック曲で実戦練習です。
一番メジャーな歌練習への入り方としては、「イタリア歌曲集」の中の曲を使った歌唱練習です。「イタリア歌曲集」はイタリアの古典歌曲や古典オペラからの小規模のアリアなどを抜き出して掲載したアリア集です。全音出版から出ています。こちらの教本を使ってレッスンしていくのがクラシック声楽の定番の流れです。
導入の歌曲集といってもプロの方が演奏会で歌われる曲やCMなどで流れるような曲もたくさん入っていて、歌いごたえのある曲集となっています。16世紀前後から現在まで歌い継がれてきているだけあって、旋律も美しいものが多く、楽しみながら練習していける曲集です。
2どのくらいのペースでレッスンするのが理想?
レッスン時間について
レッスン時間は、まだ上手に声帯の管理ができない初心者さんは45分から60分がオススメです。それ以上になると声帯が疲れすぎてしまって喉を痛めることにもなりかねないので、あまりオススメしません。
レッスン間隔(月何回のペースか)について
レッスン間隔ですが、コンスタントな上達を望むのでしたら月3回〜月4回がベターです。もちろん、受験やオーディションを控えているなどという場合は月8回(週2回)くらいのペースで通うのもありですが、基本のペースは月3、4回。趣味程度ならば月2回がベストだと思います。
3オペラ曲を歌えるようになるまでどのくらいかかる?
最初は簡単な歌曲から
先ほど書いたように、最初は「イタリア歌曲集」などの簡単な歌曲から入るのが普通です。発声を主に練習していきながら、コンコーネなどの練習教材で発声を旋律にのせる練習をし、そこへ簡単な歌曲でイタリア語を乗せながら歌う練習をしていきます。月4回レッスンに通ったとして、2ヶ月〜3ヶ月で1、2曲が仕上がっていく感じでしょうか。
人にもよりますが、月4回のレッスンを続けていれば、大体1年〜1年半くらいで簡単なアリアへ挑戦するくらいの実力はつきます。
オペラアリアにも難易度は色々ある
オペラアリアと一口に言ってもその難易度は様々です。また、初心者様の中には歌いたい曲がテノールの曲なのに、自分の声種は実はバリトンだった!などの思い違いがあったりして、この曲をいつまでに必ず完璧に歌えるようにします!という確言ができる講師はいません。
ただ、オペラアリアの中にも比較的簡単だと言われる曲は何曲かあります。そういう曲から入っていって、だんだんと理想とする難しい曲に挑戦していくのが、理想です。
ここでも起訴と同じで、いきなり難しい曲に挑戦すると色々な技術を落っことしたままにしてしまうことになるので、あまりオススメはしません。
オペラアリアだけれど、歌曲のように歌われるようなった曲
先ほどから度々出ている、初心者向けの歌曲集「イタリア歌曲集」の中には実はオペラアリアも含まれています。古典時代のオペラで今はあまり作品を丸ごと上演しなくなってしまったオペラの中にも素晴らしいアリアはたくさんあります。そういうアリアを抜き出して、オペラアリアなのだけれど、歌曲集の中にまとめてしまっているのです。
ですから、イタリア歌曲集を歌っていっているといつの間にかオペラアリアがレパートリーの中に入っていた!ということになります。
一般的にもオペラアリアとしてではなく歌曲として認知されていることが多い曲だったりするのですが、れっきとしたオペラアリアですのでこれらの曲が歌えるようになれば、オペラアリアを歌うようになったと胸を張って言えるわけです。
例)オペラ「リナルド」より「私をなかせてください」や、オペラ「セルセ」より「オンブラ・マイ・フ」など
4まとめ
初心者さんでもコンスタントにレッスンに通ってしっかりと練習をすれば1年〜1年半くらいで簡単なオペラアリアを歌えるようになる、という根拠は、わかっていただけたでしょうか?
レッスンを受けていく中で、自分の歌いたい曲は増えてい来ます。新たな目標を次々に見つけてどんどんステップアップしていくことができるようになったら、可能性は無限大に広がるのです。
誰だって最初は初心者です。右も左も分からないところから色々な道に飛び込んでいくのです。「案ずるより産むが易し」。まさにその通りだと思います。
少しでもクラシック声楽に興味を持ったなら、一度体験レッスンに行ってみませんか?悩むのはその後からでも、十分間に合います!