声楽レッスンとボイストレーニングって何が違うのでしょう?
ボイストレーニングスクールと謳っているところは主に「ロック、POPS、ジャズ、R&B」などをレッスンしています。声楽レッスン教室と歌っているところは主に「クラシック声楽、ミュージカル声楽」をレッスンしています。
どちらも「歌」や「声」に対する教室であることは同じですが、「何を目指したいのか」「どういう風に歌えるようになりたいのか」で選ぶべき教室は変わってきます。
声楽レッスンとボイストレーニングの違いを押さえておかないと、自分はクラシック声楽を習っているつもりだったのに、実際はポップスのボーカルトレーニングをやっていた、ということにもなりかねません。(ちょっと極端ですが)
きちんとした知識を持って、声楽教室の方向性やボイストレーニングスクールの方向性、講師が得意としているジャンルなどを見極めた上で自分のやりたいことに合ったレッスン教室を選べるようになりましょう。
私のように声楽教室を運営していると、色々な希望を持った生徒さんたちがやってきます。そこで、よく
という話を聞きます。前に通っていた教室を辞めて他の教室を探し出す理由の一つが、自分が望んでいたジャンルと違うレッスンをされた、ということです。
ある程度レッスンしていけば、「あれ?なんだか思っていたレッスンと違う」という風に感じ取ることもできるのですが、何も知識がない状態で体験レッスンに行っても、「そういうものか」と、なんとなく納得して、レッスンを開始してしまう人も多いのです。それだと「思っていたレッスンと違う!」と気づくまでの時間が勿体無いですよね。
そんな方々をたくさん見てきたから、それぞれに合う声楽教室、ボイストレーニング教室を案内できるようになりました。
本記事の内容歌いたいジャンルによってどういうタイプの声楽教室あるいはボイストレーニングスクールを選べば良いのかを詳しく見ていきます。
声楽教室とボイストレーニングスクールの違い
声楽教室とボイストレーニング教室の違いは簡単に言ってしまえば「クラッシック声楽やミュージカル声楽」の教室か、それ以外の教室か、ということです。
クラシックやミュージカルの世界では伝統的に歌に関するレッスンを「声楽」と総称します。逆にポップスやロック、R&Bの世界では「声楽」という言葉は使わずに、「ボイストレーニング」あるいは「ボーカルトレーニング」という言葉を使います。
紛らわしいのは、ミュージカルの世界では最近特に「声楽」という言葉と同様に「ボイストレーニング」という言葉も同じ意味合いとして使われ出してきたということです。
基本的にヨーロッパから伝わってきた発声の方法を鍛錬する場合は戦前からの言葉で「声楽」を使うのですが、アメリカ経由での発声技法の鍛錬をする場合は「ボイストレーニング」という言葉を使います。
クラシックは基本的にヨーロッパ生まれの文化でヨーロッパから日本に入ってきたので、歌を練習することや声の鍛錬をすることを「声楽」という和訳で表しました。この流れで、ミュージカルの発声方法もヨーロッパ由来の発声に近いものは「声楽練習」という風に呼ばれます。
ただし、ミュージカルは主にアメリカで発展していきました。最初はオペラ→オペレッタ→ミュージカルという流れの中で発展したミュージカルでしたが、次第にアメリカのカルチャーを代弁するものになっていきます。ここで、ミュージカルに対しての発声の2極化が起こります。ヨーロッパの発声の流れを汲んだミュージカルと、アメリカポップスやR&Bの発声を取り入れたミュージカルです。
ここに至って、ミュージカルの世界には2つの発声が存在することになりました。作品によって、声楽発声を必要とするものと、ポップスなどの発声を必要とするものが各々存在するようになったのです。
このような状況の中で、ミュージカル発声に至っては「声楽」「ボイストレーニング」、どちらの言葉も使われるようになりました。
ここで、教室を選ぶときの矛盾や間違いがたくさん起こるようになってきたのです。
「ミュージカルの歌を習いたい」と思っている人が教室を探しているとします。
その人が歌いたいミュージカル曲がなんなのか、によって最適な教室というのは変わってきます。オペラ座の怪人の曲を歌いたいと思っているのなら、声楽教室を選ぶべきですし、RENTの曲を歌いたいと思っているならボイストレーニングスクールを選ぶべきでしょう。
両方ともやりたい!という人は、少なくともボイストレーニングスクールでは本格的な声楽発声を学ぶのは難しいので、声楽教室で声楽発声を身につけ、そこを基礎としながらポップスなどの発声を習える場所を探す方が良いと思います。
声楽教室を選んだ方が良い人
クラシック声楽を学びたい人は、オペラアリアであろうが歌曲であろうがどこの国の作品、作者であろうが、声楽教室でレッスンを受けるべきです。たまに、シューベルトの「冬の旅」を歌いたくて某有名ボイストレーニングスクールに行っていました、というような話を聞きますが、びっくりしてしまいます。そのボイストレーニングスクールには声楽発声を教えれる経歴のある講師は一人も在籍していないのですが、一体どんなレッスンをしていたのだろう・・・?と思います。生徒さんもそうですが、こういうミスマッチが起こると先生の方も大変です。なるべく、専門の先生に習う方が先生も生徒様もハッピーになれるはずです。
ボイストレーニングスクールを選んだ方が良い人
ボイストレーニングスクールはポップスやR&Bを、または歌謡曲を歌いたい人が習い行くに行く場所です。クラシック声楽が専門の講師では歌謡曲までは教えることはできてもウィスパーボイスやフェイクなどと言った技術を使うポップスなどでは対応しきれなくなるからです。
声楽教室とボイストレーニングスクールにおける腹式呼吸と声帯の捉え方
また、声楽教室に行ってもボイストレーニング教室に行っても同じように「腹式呼吸が大切だ」と言われます。もちろん腹式呼吸はどの曲種や声を出すという仕事においてもとても大事なことですが、呼吸法は割と簡単なので、すぐにマスターすることができます。
腹式呼吸をマスターした先で、声楽とボイストレーニングでは腹式呼吸の使い方が変わってきます。
声楽では腹式呼吸を使って胸郭を広げ、それを支えたまま発声していきます。
ポップスでは腹式呼吸を使って息の流れを支えます
それぞれ、声楽とボイストレーニング、どちらの技法も使いますが、比重が大きく変わるのです。
また、声帯の使い方も大きく変わってきます。
声楽においては、声帯は声を作り出す場所という風には捉えません。
逆にポップスなどでは声帯が声を作り出す役割は大きいです。
体全体をつかって響きを生み出しそれを共鳴させる声楽は基本的にはマイクなどの拡声機能を使わない前提での発声方法です。
ポップスはマイクなどを使うことが前提ですので、声を響かせて遠くまで運ぶようにする、という前提の発声ではなくなります。その点において、声帯を、声を作る作業に大きく関与させます。響を作るのは機材に任せても良い領分になるので、声を作ることに声帯を使い、より繊細な表現をすることを試みます。
まとめ
声楽教室とボイストレーニングスクールでは、レッスン内容がだいぶ異なってくることがお分かりいただけたでしょうか?
最初にレッスン教室を探す時に、自分がやりたい曲は一体なんなのかをよく考えてみてから教室探しを始めると、理想の教室にたどり着くまでに遠回りをしなくてもよくなりますよ。